第99章 祭り囃子の最中
真っ直ぐに注がれる視線は他に何も映さず私だけを見てくれている様でその大きな瞳に吸い込まれてしまいそうな錯覚すら覚える
私はどうしようも無く気持ちが溢れ出してしまいそうでそっと視線を反らした
「あの………」
「ん?」
「イルミさんも絶対似合いますよね!イルミさんもお花付けてくださいよ!」
熱を逃がす様に無理に明るく発した声
「うん」
思わぬ返事に顔を上げると彼はもう片方の手に持っていた赤いハイビスカスを耳へ掛けた
「どう?」
「っ……めっちゃ似合います!」
そして私達は色違いのハイビスカスを耳元に飾り二人で写真を撮った
以前嫌だと言った彼の心境にどんな変化が起きたのか私には解らないが私の何でもない昔話を、あの日を覚えていてくれているというそれだけで胸が熱くなった
私達はホテルの部屋へ戻った
時計が差すのは15時頃
私は彼と離れたく無くて彼等三人が宿泊している部屋にお邪魔していて彼が眠っていたベッドに上半身を預けて脚をだらりと床に垂らし旅行中に撮った写真を見返していた
昨日の出来事も有無を言わさず過去に成る事を不思議に思う