第99章 祭り囃子の最中
私達は磯遊びをした後にホテルの近所を散策した
風に吹かれて潮と彼の薫りが香る
シャンプーが変わっても彼の香りは変わらずドキリと胸が跳ねた
その後私達はぶらぶらと宛てなく歩き小さな定食屋でタコライスを食べた
スパイシーな風味に舌鼓を打つ
ピリッとスパイスの効いた味に彼もお気に召した様だった
その後私達はポツリポツリと会話を交わした後に店を後にした
ホテルには立派な中庭があり、次いで私達はそこを散策する
咲き乱れたハイビスカスは赤やピンク、オレンジ、黄色、白と実に色鮮やかで見惚れてしまう
「ハイビスカスって耳に掛けたくなりますよねー。南の島感……」
「ふーん」
「落ちてるの無いかな」
「千切れば?」
「それはちょっと……」
彼の言葉に苦笑いを返しつつ落ちている花が無いか地面を見て歩いていると
「はい。これ」
彼は確か私とは離れた場所を歩いていた筈なのだが顔を上げると彼は随分近くに立っていた
「………?」
尚も距離を詰めた彼を見上げると真っ青な空に彼だけを映し取る
綺麗だなぁ………なんて考えていたのは一瞬で彼はいつかの様に私の髪を耳に掛けるとオレンジ色のハイビスカスを耳元に飾った
「お姫様」
そしてあの日と違ったのは彼の言葉に疑問符が無かった事で
私は一気に頬が熱く成るのを感じた