第98章 潮だまりとTシャツ
「………え?あぁ。うん。」
「っ……………!!!!!!」
(なんだとーーッ!!!!!!Tシャツ着てたら見えへんやんッ!!!なんなんそのお洒落!!!海の時はしてなかったやん!!!今朝ですか?!今朝付けたんですか?!?!)
私は膝から崩れ落ちそうだった
彼がTシャツを脱ぎ出した際直ぐに視線を反らした為に気付か無かったが彼がアクセサリーを付けているという只其れだけの理由でとんでもなく萌えてしまったのだ
「……魚取らないの?」
「………とります。」
私は興奮のあまり震えていた
しかし目が潰れそうなので彼を見る事は出来ずとにかく魚を取る事に集中する事にした
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洋服を縛っている為に最初こそ水に浸けるのに抵抗があったが浸けてしまえば後は本当に夢中に成った
彼が海水を運んで作ってくれた小さな潮だまりはバケツ代わりに成り私が夢中になって白熱した証の小魚達が泳いでいた
「いっぱい取れた!」
「うん」
「イルミさんも取りますか?」
「俺は良いよ」
何気無く顔を上げると岩場に腰掛けて海風に吹かれる彼に目を奪われる
キラリと輝くシルバーネックレスが風に揺れていて鬱陶しそうに髪をかき上げる仕草に私は暫く動けなかった
「満足した?」
「………っはい!」
「そう。そろそろお昼だよ。行こうか」
「はい!」
彼は私からお手製網をやんわり取り上げるとTシャツをほどいて思い切り絞った
其れを呆然と眺めながら思う
彼は脱水機よりも力強い
すっかり水分の無くなったTシャツを着た彼に
「行くよ」
と言われて後を追う
「イルミさん!何処に行くんですか?」
「何処に行こうか」
私達を照らす太陽は高く登りキラキラと海を照らしていた