第98章 潮だまりとTシャツ
なんなら洋服のまま入って取りたい………
しかし今夜はホテルイベントのお祭りもあるし髪型やメイクは崩せない
顔を浸けずに入るか……?とも考えたが白いTシャツにダボダボジーンズ………中にキャミソールは着ているが………
彼の目さえ無ければキャミソールにパンツ姿で入るのにッ!!!なんて事まで考え
一人夢中になって遊んで一体私は何処へ向かっているのか……と冷静になった
「魚………欲しいの?」
「え!?欲しいって言うか捕まえたいですよね。」
「ふーん」
彼はそう言うと元来た道を戻って行く
「え、ちょっと待って!置いて行かんといて!!」
「置いて行かないから待ってて」
「………?」
私はポツリと岩場に立ち尽くしただ彼を待つ
言葉を投げ掛ければ返事はあるのでそう遠くには居ないのだろうが背丈の高い草や木に隠れて彼の姿は見えず何故待たされているのかも解らない状況に些か不安を覚えた
暫く大人しく魚を眺めていると背後から声を掛けられた
「これくらい長さが有れば取れるよね」
彼の手に握られていたのは先が二股に別れた木の枝だった
いや、枝と言うには立派過ぎるので木の棒と言うべきか……
「………?」
いくら長さが足りても只の木の棒で魚は取れない
彼は私を棒一本で魚を取れる様な野生児だと思っているのだろうか……
なんて考えていると徐にTシャツを脱ぎ始めるイルミさんに変な声が出た
「ちょっ……!え?!……イルミさん……?」
「……何狼狽えてるの、海に落ちるよ」
「お、お、落ちたら助けてください!!」
「………これで網に成るでしょ」
彼は脱いだTシャツを木の二股部分に縛り付けて簡易で網を作成したのだ