第98章 潮だまりとTシャツ
遅れてやって来た三人
「セルフなら先に言っておいてくれよ」
唇を尖らせて文句を付けたクロロさんに苦笑いを浮かべていると
「ビュッフェも知らないなんてクロロもヒソカも世間知らずだよね」
なんてサラリと言って退けるイルミさんに私は思わず吹き出しそうになるのを必死で耐えた
(イルミさんも知らんかったやん……)
とは、彼の威厳の為に言わないでおいた
朝食後、本日は自由行動となっている為にクロロさんはいつの間にか姿を消していてヒソカさんも暫くすると何処かへ出て行ってしまった
「………イルミさん」
「ん?」
「私達は何しましょうか」
「別に何でも良いよ」
「うーん。とりあえずちょっと売店見ませんか?」
「うん」
残された私達はホテルの売店へ向かった
お土産は昨夜購入したので必要無いが自分にも何か購入したいなぁなんてぼんやり考える
流石大きなリゾートホテルだけあって売店も立派なもので
施設内のプールを楽しめる為にか、ビーチサンダルや浮き輪、水着なんて物迄売っていた
そんな中で私が目を付けたのはアロハシャツを着た黒猫のぬいぐるみだった
無表情かつ大きな瞳に無理矢理着せられた様な陽気なアロハシャツ
「イルミさんや………」
「え……。」
黒猫というのも真っ黒な髪や猫目がちな瞳の印象とマッチしていて私は益々アロハ猫を気に入った
「……買おうかな」
様々な大きさが用意されている中で中くらいのぬいぐるみに手を伸ばしたその時
「コレが俺?」
ぎゅっとぬいぐるみの顔を掴み上げて繁々と眺める彼により私の手は空振りに終わった
彼の掴み方は乱暴で頭が爆発してしまいそうだ
「ちょっイルミさん潰れる!!」
「沙夜子が下らない事言うからでしょ。ほら行くよ」
彼の手によって棚に戻されたぬいぐるみは無事だったが急かす彼の声に後ろ髪引かれながらその場を後にした