第97章 溜息
私の向かいにはガウン姿で無造作にはだけて覗く胸板が犯罪的にセクシーなイルミさんが気だるげにグラスを傾けていて私は余計にアルコールが進む
まだ水気を含んだ長髪を長く垂らして窓枠に肘を付いている彼は遠く暗闇を眺めながらも細められた瞳とガラス越しに時折目線が交わり私はじんわり頬が熱くなった
それがアルコールのせいなのか彼のせいなのかは今はどちらでも良いとして
彼の妖艶さはどうにかならないものかと室内へ視線を逃がせば今度はベッドにて読書をしながらワインをらっぱ飲みしていたクロロさんと目が合い不意にドキリとしてしまう
(………何でみんなガウンなん………反則でしょ………)
チラリとヒソカさんを見遣れば胸板は勿論だが腹筋迄覗いた姿でウインクをされてクラクラしてしまい遂に視線を床に落とした
「ねぇイルミ何飲んでるの?♥️」
「ウイスキー」
「ボクにもおくれよ♥️」
「勝手に飲んで」
二人の会話に顔を上げると近寄って来たヒソカさんがイルミさんと肩を組もうとして可憐に避けられていた
「キミは本当に潔癖だよね……そんなに避けなくても……♣️」
「………」
「そう言えばそうだな。イルミは人に触れられるのを嫌う」
呟く二人の言葉に思い切り眉をひそめた彼に疑問符が浮かぶ
……………私は彼に結構触れている気がする
今日だって水族館でずっと手を繋いでいた
彼は私が知らないだけで他人との触れ合いが苦手なのだろうか
だとすれば私だけ例外だという事実に溢れんばかりの喜びを感じてしまうのは恋心故に致し方無い
気が付くと、いてもたっても居られず私は凄い勢いで立ち上がり彼のスラリと伸びる脚に抱き着いていた