第97章 溜息
暫く車に揺られて到着した場所は今日の最終目的地、国際通り
すっかり陽の沈んだ街にネオンが浮かぶ
沢山のお土産屋さんと飲食店等が建ち並ぶ通りは大勢の人で賑わっていた
お目当ては観光兼お土産購入と夕飯だ
予約があるので先ずステーキ○ウス88へ向かう
完璧に地図を暗記しているイルミさんの案内で店へはスムーズに辿り着く事が出来て私は小さな拍手を送った
店内へ入ると所狭しと張られた芸能人のサインが目に入る
大好きな芸人さんのサインを見付けて思わずテンションが上がる私だが客席に案内されてしまったので後ろ髪引かれながら席に付き、運転手のイルミさん以外当然の様にアルコールを頼んだ。勿論私もだ。
彼には悪いがアルコールは譲れないので容赦はしない……しかし、彼の顔色が気になりチラリと伺ったが彼も気にしていない様子で水を飲んでいたので平気だろう……
各々好きなステーキを注文して約一時間程で店を後にしたのだが一度飲み出した私は飲み足りずコンビニで酒を買い込み三人を襲撃する事を独り強く誓い大通りを歩く
自然と横に並んだイルミさんは真っ黒な瞳に沢山のネオンを映していた
「イルミさんは誰かにお土産買います?」
「沙夜子の家族」
「……!!そんなお気遣いは「親方見て貰ってるし」
「………ありがとうございます」
思ってもみない言葉に彼の優しさを垣間見て胸が綻ぶ
ゆっくり時間を掛けて沢山のお土産屋さんを見て回り
私は家族、親戚、親友、しっかりと藤木にもお土産を購入して達成感に浸っていたのだが
ずっと一緒に行動していた筈の彼が見当たらず辺りを見渡すと広い店内の端っこで一人佇んでいた
「イルミさーん、どうしました?」
「これ」
「?」
彼がじっと見ていたのは手のひらサイズのスノードームだった