第97章 溜息
フロントで手渡されたイベント案内には旧館にて衣装レンタル、着付けを行っていると記載されているが色なんかは選べるのだろうか……楽しそうに降りて行った鮮やかな背中をぼんやり眺めながら
是が非でもかんざしに似合う青や紫を基調とした物を着たいなぁなんて考える
チンとベルの音が鳴りエレベーターから降りた私達は隣り合わせの部屋の鍵を開けた
「直ぐ夕飯に行くでしょ。迎えに行くよ」
「え、あ、はい!」
直ぐ隣の部屋なのに 迎えに行く なんて言われてちょっとドキドキしてしまった
扉を開けば独りで眠るにはゆったりと大きなベッドが鎮座しておりオーシャンビューの窓辺にはテーブルと椅子が設置されていた
(…………一人には広いなぁ………)
何とも贅沢なのだが広々とした室内は少し寂しい
私は寂しさを紛らわせる為に荷物を広げた
明日着る予定の服をハンガーに掛けたりかんざしをベッドサイドに置いたり充電器を設置したりすれば自分のテリトリーが出来上がり先程より幾分か安らぐ空間になった
「よし、」
「何が?」
「うわっ!!!びっくりしたぁ……」
音も気配も無く背後から声を掛けられて私はすっ転んでしまった
「何してるの。行くよ」
淡白に見下ろす彼に急かされるが私を驚かせたのは貴方だ!と叫びたくなった
………まぁ……大人しく従い部屋を出る