第94章 海を渡る橋
そして刺さる視線の嵐、「きゃー」なんて声やご本人様達の名前迄聞こえる
そりゃそうだ………アダルトリオご本人様が揃い踏みで歩いているのだ………私だってそうなる………
私は出来るだけ身体を小さく縮めて歩いていたのだが不意に
「何あの女………三人の連れ……?」
「違うでしょ………」
聞こえた声はクスクスと嫌な笑みと共に耳に届いてグサリと心臓に刺さった
楽しい旅行の筈なのに冷静に俯瞰で見ればそんな物だろう……気分が落ち込んでしまう……
瞬間に手に触れた温もりに顔を上げると真っ直ぐな視線と交わり彼が私の手を取ってくれたのだと理解した
「おい沙夜子ーはぐれてないかー?」
「君の彼女でしょ、ちゃんとエスコートしてあげなよ……それともボクがしようか?♥️」
「煩い。もうしてる」
「クックックッ……♥️」
「……よーし!観光するぞ観光!」
「………っ」
三人にもあの声が聞こえたのだろう………三人に交ざっていて良いんだ、と居場所を与えられた気持ちになった
クロロさんは盗賊を率いる団長という立場からか仲間を守る意識が強いのか声を掛けてくれた
ヒソカさんは謎の興味を抱いている為に声を掛けてくれた
イルミさんはテリトリー内の者を守る為に手を取ってくれた
だが今の私には理由なんてどうでも良くてただ単純に嬉しかった
途端に伸びた背筋で真っ直ぐ前を見据えると広がったのは草原だった
舗装された道を行くと見えて来るのは透明度の高い海
ダイナミックに弾ける波に思わず声が漏れ出した
何処までも透き通るような海は遠く沈む珊瑚を眺める事も出来る