第10章 動物園へ行きましょう
時たまチラリと視線が合うが彼はいよいよ私に見詰められる事に慣れた様子だった
(………あれ、ちょっと待って。凡ミスしてるかも………)
「イルミさんコーヒー好きですか?」
「うん」
「ご実家ではよく飲まれてました……?」
「1日三杯ってよく飲む?」
(…………ッしまった…………!!!)
私はコーヒーが苦手だ。
従って自宅にコーヒーの類いは一切置いていない
イルミさんはさも当たり前の様に麦茶、もしくはミネラルウォーターを飲んでくれているし普段自分が飲まない分全く気が付かなかった
(私ほんまそういう所あかんわ………)
「……気付かんくてすみませんでした。言うてくれたら買いますから!ホット派ですか?」
「郷に入っては郷に従え、だよね」
「…?」
「俺は今沙夜子の家に居候してるし、それに元々其れ程こだわりがある方でも無いから」
「私が嫌です!何かモヤっとします。ホット派なんですか?」
「…………うん」
「わかりました。今日帰りスーパー行きましょう!」
「沙夜子が良いなら……」
しおらしいイルミさんはかなり可愛い。
しかし…………何故そんなに遠慮深くコーヒーを買う事を躊躇していたのにドンキ◯ーテに行った際、頻りに自宅で遊べるワニワニパニックを欲しがっていたのか非常に謎だが考えても無駄だろう
何しろ考えたってイルミさんの思考は謎だらけなのだから
(………あんなに欲しそうやったしワニワニパニックも買うか………)
物にしろ何にしろ執着しない彼が私と出会って執着したのはワニワニパニックと自宅に鎮座する座椅子くらいのものなのだから……
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喫茶店で半分寝かかっていた私は自身のお腹の鳴る音で羞恥が込み上げて一気に目が覚めた
(多分さっきまでのボーッとしてる顔の方が不細工で恥ずかしいねんけどな……)