第93章 揺れる水面
名前を呼んだ癖に何も語らない彼に疑問符が浮かぶ
「……イルミさん………?」
私の呼び掛けにピクリと眉を反応させると彼の視線は私の身体を眺める様に動き出し
瞬間に身体中が熱を持ち始める
「……似合ってるね」
「え、えへへ………ありがとうございます……」
飛び上がりたい程嬉しい言葉だった
……いや、正確にはちょっと跳ねてしまった
そんな私に一歩距離を詰めた彼はゆっくりと腕を伸ばす
「?!」
彼の手は実に悠長にレース部分を捲ると何を確認したかったのか知らないが納得した様に、ふーん、と唸り離れて行った
「行くよ」
言うなり先を行く彼
彼の行動にもドキドキしているというのに彼の水着姿は悩殺的で鼻血を吹き出してしまいそうになる
(そう言えばクロロさんとヒソカさんも水着やん………これはいよいよ天に召されるな………)
なんて思いながらプールサイドに出ると既に二人共水の中だった
「飛び込むから退いてくださいね!!」
私は身体の熱を逃がす様に助走を付けてキラキラ輝く水面に飛び込んだ
途端に心地好い冷たさが包み込み灯りが揺れる方へ浮上する
彼はただじっとプールで佇んでおり端から見れば全く楽しく無さそうだが
心無しか大きな瞳が楽しそうに揺れていた
私達は深夜迄プールではしゃぎまくりワインを実に4本開けた
きっと私達の笑い声や話し声は近隣に響いてさぞ煩かっただろうが心の中で謝罪しつつも楽しい時間を終わらせたく無くて私は最後迄プールから出なかった