第93章 揺れる水面
彼等も色々言っていたが皆仲良くフランス料理を選びコンシェルジュの方に頼んでプールサイドでのルームサービスとしてもらった
オレンジともまた違った色に染まった海は言葉では言い表せない程に美しいグラデーションを見せていたが日が沈むと辺りを森が包んでいる事もあり満点の星空が顔を出した
室内のライトに照らされて揺らめく水面は美しく幻想的な雰囲気で
其所に運ばれて来る彩りの美しいお料理にワクワクした
どれを口にしても美味しくて歓喜の溜息ばかりが漏れ出したのは言うまでも無くデザート迄堪能した私達は大変満足のまま食後にワインを頼んで四人でグラスを傾けた
リクライニングチェアに体重を預けたヒソカさんは妖艶な雰囲気を醸し出し
クロロさんは持参した書物を読みながらどこか知的な雰囲気でグラスに口を付けていた
私はというとブカブカのオーバーオールの裾を思い切り捲り上げてプールサイドに腰掛けていた
足を動かせばちゃぷちゃぷと心地好い波紋が広がる
まだまだカラリと暑い沖縄だからこそ夜でも寒さを感じずアルコールが回って火照った肌に気持ちが良かった
イルミさんはというと私を真似る様にジーンズを捲り上げると同じ様に足をプールにつけて隣に座りワインを飲んでいた
チラリと見ると彼は室内の灯りに照らされて影を作り瞳を細めてグラスを傾けていたのだがふっくらとした唇からタラリと赤い滴が垂れた
白い肌に濃い赤が栄えてドキリと胸が跳ね上がって騒ぎ始める
その姿はまるで本物の吸血鬼の様で長くしなやかな指で滴をすくい上げる仕草に緩く開いた唇から覗いた舌に視線を外せなくなってしまった
すると私の視線に気付いた彼は私を鋭く射抜き途端に瞳は妖艶な色を湛える
悠長な所作でワインを拭った指を舐める彼から目が離せずに固まっていると
「何?」
意地悪に口角を上げた彼の声が届いた
「……い、いえ………」