第93章 揺れる水面
リビングルームから直通で行けるプールサイドにはパラソルの付いた四人掛けのテーブルとリクライニングチェアがリゾート感を演出している
私は高まるテンションをそのままに部屋中を駆け回った
バスルームはプール側がガラス張りになっており海を一望出来る素敵仕様だがプールサイドに誰かいると丸見えの心許ないものだが、そこは配慮してくれるだろう……
ベッドルームは全部で二つ
一つ目はキングサイズのダブルベッドのお部屋でもう一つはツインルームに成っている
どちらにもトイレとバスルームが隣設されており怖がりでビビりな私でも真夜中のお手洗いも安心だ
なんて独り安心し、部屋を出ようとツインルームを振り返ると既に此方にはクロロさんが荷物を広げていた
「あれ?此方が私とイルミさんじゃないんですか?」
「何言ってんだ、カップルなら気にしないだろ?大体男二人が一つのベッドで眠る訳無いだろう……」
「………そ、そうですね」
完全にベッドは別だと思っていた私だったがクロロさんの正論に静かに頷いた
瞬間ドキドキと高鳴る胸は顔中に血液を集め、私をじっと見据えていたクロロさんは首を捻る
「………沙夜子……お前達もしかして……まだヤッてないのか?」
「ブッ!!!!何言ってるんですか!!!やめてください!!!」
「……そうかそうか……」
酷く取り乱した私に彼は納得した様に頷くと爽やかな笑顔と共に
「沙夜子から仕掛けたらどうだ?」
「…っ…!!!!」
「雰囲気も良いし最高じゃないか!」
「ちょっ……止めてくださいよっ!
!」
「ヒソカは俺が引き付けておくから安心しろ!」
とんでもない事を言う人だ
私は声も失って口をパクパクさせる他無く立ち尽くす
当の本人は至ってあっけらかんと笑うものだから呆然としてしまった
「何してるの」
「…!!!いえ、何でも!」
背後から単調な声に話し掛けられて肩が跳ねた挙げ句声が裏返る
私はこの短期間にどっと汗をかいてしまった
「荷物、部屋に運んでおいたけど」
「……ありがとうございます!」
クリっと小首を傾げる彼にお礼を言いつつ先程迄の会話からいたたまれなくなって部屋を飛び出した