第92章 閉じ込めた青
重力のままに地面に打ち付けられる事を悟り身構えてぎゅっと瞼を閉じたのだが思いの外早く暖かな衝撃
「危ないなぁ♥️」
頭上から降る声に見上げれば私はヒソカさんの逞しい胸板に思い切り体重を掛けてもたれ掛かっていた
咄嗟に離れ様と上体を正そうとするがイルミさんより筋肉質な腕は私を支える形で肩を抱いており、ぴったり彼に引っ付いた体制のままびくともしない
焦りは込み上げるが彼のお陰でこの先の観光びしょ濡れのまま過ごさずに済んだので小さくお礼を伝えていると強引に腕を引かれて身体を振り回された様な感覚に陥る
「……!?」
「何してるの。行くよ」
驚きをそのままに見遣ると先を歩いていた筈のイルミさんが私の腕をしっかりと掴み直ぐ傍に立っていたのでやっと状況を理解する
喉の奥でクツクツ笑うヒソカさんは降参とばかりに軽く両手を上げておりイルミさんは思い切り眉を潜めた後に私を引っ張り歩き出した
「ちょっあの……「何。また転ぶよ」
「イルミさん……腕痛いです」
「………はぁ」
私は彼に二の腕を引かれて歩いていたのだが力が強いと言うより変なツボに入っているのか妙に痛くその旨を伝えると彼は溜息と共に私を解放し
「しっかり掴まってなよ」
と言って腕を組みやすい様にジーンズのポケットへ手を入れた
私はドキドキするやら嬉しいやらで嬉々として彼の腕に掴まった
「ありがとうございます!」
「何が」
「何でも無いです!」
私の弾む声が鍾乳洞内に響き少々恥ずかしかったが彼と並んで同じ景色を見られる事が心底嬉しかった
………そう言えばヒソカさんにお礼はしっかり伝わっただろうか
振り返ると少し離れた場所を歩くヒソカさんと目が合いニッコリ微笑む彼にありがとうございます、と声を張る
途端に早足になったイルミさんから離れぬ様にぎゅっと力を込めて必死にしがみ付き私達は再び地上へ出たのだった