第92章 閉じ込めた青
少し遅れて歩く彼は静かに上を見上げていて、彼なりに観光している事に胸を撫で下ろす
鍾乳洞内を流れる川は水音を何処までも反響させて辺りに届け
透明な水は簡単に底を見せ、覗き込むと時折泳ぐ魚の姿を確認する事が出来た
「今魚おった!」
「何処?♥️」
「ほらあそこです………っ」
「本当だね♥️」
足元と頭上を照らすライトに間接的に照らされてヒソカさんが随分至近距離で川を覗いている事に気付き声を詰まらせてしまったが
「どうしたの?♥️」
ニッコリ微笑んだ彼は下心は無いとでも言い聞かせる様な穏やかな声色で直ぐに離れて行き
自身が警戒し過ぎているのだろうかと良心が痛む
………せっかく旅行に来ているのだ
色々考えて楽しめ無いのは勿体無い
良く良く考えれば凄い事だ
何しろあの某有名キャラクターご本人様達と旅行をするという貴重体験を許された私は人類で選ばれしラッキーガール!!!
これは楽しまねば損というやつだ
なんて考えつつ歩いていると
私とヒソカさんの隣をすり抜けて先導を切る様に歩き出したイルミさんの背中
然程離れていない距離感で歩みを進めるイルミさんを見てあの背中に並びたいと思ったのが本音だが
私と歩幅を合わせてニコニコと至って普通に観光するヒソカさんを置いて行くのは何だか気が引けてそのまま中腹辺りを散策していたその時
濡れた床に足を滑らせ前方向へ身体が傾いた
(あ………やばい………)