第92章 閉じ込めた青
過ぎた筈の夏に戻った私達を照らす太陽はくっきり影を型どり
この先この場に、……この世界に彼等が存在するのは今だけで
この先の人生の中でこの日を振り返った時この世界に存在するのはこの中で私だけ。
私は一人残される事を不思議に思った
そして同じ様にだからこそ無くしたくないと思った
「皆さん!写真撮りましょ!」
私の声に立ち止まりシーサーの前に並ぶ三人をカメラに収める
キラキラの青を閉じ込めた写真はきっと良い出来栄えだ
「沙夜子も撮ってあげる」
と言った彼に甘えて美形二人に囲まれた贅沢ショットを撮ってもらった
ファンになぶり殺されそうなショットだが本当は彼とツーショットが欲しかった……なんてそれこそ贅沢だろう
実は以前友人と訪れたここは
入園すると直ぐに玉泉洞という鍾乳洞の入り口があり
珊瑚を主成分とした琉球石灰岩でできた玉泉洞は本当に大きく長かったイメージがあった
吸い込まれる様に其所へ消えたクロロさんを見ながらやはり彼も自由人か……と認識を再度改める
写真を撮ってくれた事で私より遅れて歩く彼を気に止めつつ一足先に鍾乳洞へ足を踏み入れると身体を包む空気が徐々に涼しい物へ変わった
天然冷房とはこの事だ
「やっぱり洞窟って涼しいですね!」
「本当だね♥️」
暗闇に響いた私の言葉に返事を返したのはヒソカさんだった
クロロさんに次いで鍾乳洞へ姿を消した彼だったが長い階段を下ると私達の到着を待ってくれていた様で直ぐ傍で声が聞こえた
ライトアップされた鍾乳石は水滴で輝き舗装された道に滴を落とす
先を見遣ると何処までも続く様な暗闇にヒソカさんが佇んでいた
「行こう、沙夜子ちゃん♥️」
「はい!」
薄明かりの中怪し気に微笑むヒソカさんに誘われる様に歩きながらも彼が気になり振り返る