第90章 楽しみ前夜のヒトコマ
時間にして20秒程
「あとはこれに顔を書きます」
「…………」
彼は儀式と聞いてもっと仰々しい物を想像していたのだろう
先程迄の真剣な表情は消えているが真面目故に私の言葉に従ってマジックを手に取る
私はてるてる坊主に彼の特徴的な瞳を描いた
「完成!てるてる坊主イルミさん!略してテルミさんです!」
「………」
中々の出来栄えだ
デフォルメされた彼の顔は自画自賛ながら特徴を捉えていて可愛らしい
次いで声を上げた彼
「出来た」
「…………!!!!」
………忘れていたが彼は画伯だった
てるてる坊主の顔に描かれたイラストはインクが滲んだ事も相まって悲痛を訴えかけてくる様な印象を受ける
「沙夜子がモデルだからてる沙夜子坊主」
「わ、わーい、ありがとうございます!」
(てる沙夜子坊主、こっわ…………!!!)
てる沙夜子坊主と名付けられた其れはちゃぶ台に置かれて無機質に転び不気味に此方を向く
私は彼に作り笑いを浮かべつつ不気味な物から逃げたい一心で素早くベランダへその二体を出した
「明日……晴れますかね……」
「儀式したから大丈夫だよ」
もし晴天にならなくても
てる沙夜子坊主は魔除け的な力を発揮してくれるだろう………