第90章 楽しみ前夜のヒトコマ
9月13日夜
沖縄旅行を前日に迎えて大きなキャリーバッグは何処か誇らし気に輝く
私は手荷物用バッグの中身を確認した後に手作りの旅のしおりを仕舞った
彼は彼で実家から借りたキャリーバッグに荷物をしっかり詰め終えてコーヒーを飲みつつスマホを弄っている
明日から始まる長旅にワクワクと胸を高鳴らせながらテレビを見ていると
「沖縄、明日曇りらしいよ」
単調な声で告げられた
「まじですか!嫌やー!!!」
「ほら」
彼はどうやら天気予報を見ていた様で差し出されたスマホを見遣るとしっかり雲の絵が表示されていた
一日目はたっぷり沖縄感を味わう為に野外での観光が多くありせっかくの景色も魅力半減になってしまう
脱力してちゃぶ台に項垂れながら絞り出した知恵
「てるてる坊主作りましょう!!」
「何それ」
「晴天を願う儀式です」
「………儀式」
正確には儀式かどうか不明だが私の言葉に真剣な眼差しを返した彼の前に箱ティッシュを置く
「では……儀式を執り行います」
彼の謎の拍手で始まったてるてる坊主作り
私がティッシュを一枚手に取り丸めるのを見て彼も真似る
そして丸めたティッシュを新たなティッシュの中央に設置して包み輪ゴムで縛れば完成だ