第89章 バーカウンター
母は緊張からまともに彼を見られない様子で答えたのだが
「瑞穂ちゃんね♥️ボクは……」
鮮やかな手捌きでカードマジックを披露すると何処からともなく真っ赤な薔薇を取り出し
「ヒソカ、宜しくね♥️」
ちゅっと口付けた其れを差し出した
おずおずと受け取った母が卒倒しないか心配になる
私は小声で異世界から来た事を母も知っているという事を伝えると
彼は少し驚いた後に妖艶な笑みを浮かべた
「何飲む?ボクがお任せで作ろうか♥️」
「「はい!」」
親子揃って声を重ねた私達を後にしてカウンターの端でカクテルを作る彼の姿は様になり
ため息が漏れそうな程の色気を纏っている
「本物やー!めっちゃ格好いい!!やばいなぁ!!」
「ほんまめっちゃ格好いいよなぁ!!!!やばいやばい!!!」
小声ではしゃぎまくる私達は似ていると思う
どうぞ、と言って運ばれてきたのはオレンジ色のカクテルと赤色のカクテルだった
「沙夜子ちゃんにはこっち、瑞穂ちゃんにはこっち♦️」
赤色のカクテルを母に手渡しつつ君のイメージカラーで作ったんだ、何て口説き文句をサラリと吐く彼にどぎまぎしてしまう
「これはサービス♥️」
更に出て来たのはチョコレートとナッツの入った皿だった
気が付くと混雑し始めた店内で彼へ指名が入る
彼はまたしても妖艶な笑みを浮かべると
「残念だけど行ってくるよ、また後でね♥️」
と言い残し手捌きも見えぬ神業で私達の前にハートのエースを置いてカウンターから消えた