第89章 バーカウンター
「私いってきます!イルミさんは先に休んでてくださいね!」
「……うん」
「では、」
「……沙夜子、迎えに行くよ」
「!!」
「そろそろかなと思ったら連絡して」
「……良いんですか?」
「逆にダメなの?」
「いえ!お願いします!」
彼の言葉はまるで魔法だ
先程迄のモヤモヤはすっかり消えて緩む頬をそのままに私は自宅を後にした
___________"
黒いシックな扉を潜るとジャズが流れる間接照明で薄暗い店内には上品な雰囲気が漂い沢山のアルコールがズラリと並ぶ
店内を見渡さずとも一際目立つ風貌の男はカウンター越しにニッコリ微笑んだ
「やぁ、沙夜子♥️」
「……どうも」
「また来てくれるなんて思っても見なかったよ♦️」
「あはは……」
「今日はお友達連れなんだね、此方へどうぞ」
自身のカウンター前を勧めつつウインクを落とす彼は髪を下ろした状態に素っぴんと、本当に恐ろしくイケメンで
何度か会っている私ですら赤面待った無しなのだ
かなり緊張した様子の母はにやける顔を手で隠して絶句している
「お友達じゃなくて母と来ました」
「沙夜子のお母さん?随分綺麗だからお友達かと思っちゃった♥️」
「えぇっそんな………!」
なんて口ごもる母は娘の私が言うのもなんだが本当に実年齢より若くみられる事が多く美人だと私は思う
「お名前を教えてくれるかい?♦️」
「瑞穂です……」