第88章 フルコースは投げられて
次いで運ばれてきたのはお肉
「アントレだよ」
「アン……はい」
「ステーキ。手の込んだ事は短時間に出来ないから」
「いや…十分過ぎます………」
かかったソースも上品な味わいで柔らかく厚みのあるステーキは嫌な油が無くいつまでも食べられそうだ
箸とフォークとスプーンくらいしか無い家なので仕方ないのだが箸で食べるのが恥ずかしく感じる程の絶品だった
随分進んだアルコールは軽く一本開けて二本目へ突破する
最後に運ばれてきたサラダとチーズに特別感を抱きながら酔いしれて上機嫌で名作のエンディングを歌っていると
「完成。実はこれに時間がかかってね」
「……………っ!!!!」
彼が手に持っていたのは実におどろおどろしい物だった
そして冒頭に戻る
「沙夜子好きでしょ。ジ○リ」
「………はい」
「で、作れそうなの調べたらニシンのパイだったんだよ」
「………え………違う………」
魔女○宅急便の作中に登場するニシンのパイは可愛らしく美味しそうだった
しかしどうだろうか………彼が手に持っているのは………
「本場の作り方だからね」
パイ生地にまるままのニシンが突き刺さり実に9匹が顔を覗かせた不気味なものだった