第88章 フルコースは投げられて
(イルミさんって心配性やなぁ……)
昨夜の事を思い返しまだ火傷の事を気遣ってくれているのだろう
自身に向けられる彼の優しさが嬉しくてそわそわしながら彼の帰宅を待っていると暫くしてガチャリと扉が開く音と共に彼は大量の買い物袋を抱えて帰宅した
「お帰りなさい!」
「ただいま。」
少し汚れた作業着姿で買い物袋を抱える姿は新婚生活で妻を助ける旦那さんの様でドキドキしてしまう
思わず駆け寄った彼からはほんのり木材の香りがした
満面の笑みで仰ぎ見ると彼の瞳と目が合う
彼の手料理とは一体どんな物だろうか……以前ホットケーキの作り方を教えた際飲み込み早く綺麗なホットケーキを焼いていたのを思い返すが例の鳥を殺めた事件もあり、まぁ食べられるものだろうが危ういラインである
しかし……内容を省けば料理を作る彼もさぞ格好いいのだろう………想像だけで幸せに浸っていると
「言った通り俺が夕飯作るから沙夜子はキッチン立ち入り禁止ね」
まさか傍で眺める事を禁止されるとは思いもしなかった
「え、立ち入りも禁止なんですか。見たいのに」
「禁止。そうだ、魔女○宅急便でも見てなよ」
「……え………」
(何故魔女宅…………)
全く理解出来ないが黒々と有無を言わさず見詰められれば私に成す術は無い
指定された通り録画を再生して座る
ちっぽけな火傷だけで私は至って元気なのだが彼は偉く大変な怪我だと捉えているらしい
律儀にエプロンをつけて動き回る彼を横目に見ながら私は落ち着き無く身体を揺らして待った
__________"
「まずアミューズね」
「アミューズ……って何ですか」
「コースの突き出しの様なもの」
「え、コース?!」
「うん。此方に来てから沙夜子はジャポン……日本の定食を毎日出してくれたでしょ。だから今夜は俺の所の料理に近い物を出せたらと思って。食材も色々調べたし問題無いよ。勿論毒も入ってない」
彼が持っていたのは見慣れた小皿にちょこんと乗せられた小料理