第87章 何でもない日曜日
9月2日、日曜日
目を覚ました途端に固まった
「おはよう」
「おはようございます」
布団から出ずに頭を支える様に肘を立てて此方を見詰める彼の大きな瞳に捉えられてしまったのだ
(………?)
彼の方へ身を丸めて眠っていた私は必然的に間抜けな寝顔を晒していた訳だが
彼は特段何もせずに私側に添う様に横たわり私の寝顔を見詰めていた
(おいおい…………めっちゃ恥ずかしいんですけど………何……)
「良く眠ってたね」
「……はい……今何時ですか?」
「13時くらい」
「……寝過ぎました」
恥ずかしさから布団を鼻元迄引き上げて目を合わせる
彼は大きな瞳を一瞬細めると無表情に私の髪に手を伸ばした
「凄い髪型だね」
決して肌に触れた訳では無いのだが彼の手が髪をとき指先に絡ませる様に毛先を弄ぶ仕草は私をドキドキさせるには十分な威力で
「12時間かけてセットしましたから……」
なんて台詞を吐いた私に彼は僅かに微笑み「何の動物だろう」と言って布団を出て行った
一緒に生活をしているという事は
顔がパンパンに腫れている所も見られるし、寝顔、寝起きの酷い顔だって相手に見せる事になる
後を追うように布団を出て洗面所に立つと鏡に映った私は物凄い寝癖を作っていた
一定の束毎にクルリと跳ねた毛は癖毛を存分にアピールしてボリューム満点だった
リビングから「この犬に似てる」と、わざわざ動物図鑑を捲っていた彼の声