第85章 夏の終わりの彼と私
「完成です!」
前に回り込み確認してみる
がっしりとした骨格や半袖故に露見する逞しい筋肉を見てしまうと男性そのものなのだが……顔立ちだけ見れば本当に綺麗な女性の様で敗北感すらこみ上げる出来映えだ
「めっちゃ似合ってますよ!!」
テンション高く手鏡を手渡す
自身の姿を確認した彼は不満気な表情を浮かべていたが気にしないでおく
「………あの、まだやりたい髪型があるんですけど……その前にお願いが………」
「何」
「………メイクしたら駄目ですか……?絶対似合うと思うんですよ!!寧ろ似合い過ぎて違和感無いと思うんですよねッ!!!」
「…………」
「お願いします!!!」
「……今回だけだよ」
「!!!ありがとうございます!!」
眉をしかめていた彼だがやれやれ感を出しながらも許可を出してくれた
「これ外しても良い?」
「あ、はい!」
私は嬉々として化粧品を揃えて巻き髪も作ってしまおうとコテを温める
元の姿に戻った彼はふぅっと息を吐いた後にじっと私の様子を伺い待ってくれていて、その姿が可愛い…!!
「じゃあイルミさん………まず………ファンデーション………は、要りませんね」
通常メイクは基礎から始まるものだが……彼は男性とは思えない透き通る肌をしている
私御用達の基礎化粧品等、塗ってしまった方が勿体無い気がした
「よく解らないから任せるよ」
と興味無さ気に言った彼の前に座る
(………………あれ………これめっちゃ近くない…………?!しかも………私……イルミさんに触るの………?あの端正なお顔に触れるの!?!?!?やべぇ………正気の沙汰じゃ無ぇ…………!!!!!!)
意識するとどっと汗が吹き出した