第85章 夏の終わりの彼と私
京都の一件の後も彼は何事も無かった様に振る舞ったではないか………しかし私の願望が見せた夢だった場合
ジャブ程度に確認を入れたにしても内容が露見するのはいたたまれない………
そんな事態に陥れば絶対に立ち直れない………
私は直ぐにお昼にしよう、と伝えた後素っぴんながらも着替えを済ましキッチンに立った
玉子焼きを作り明太子を焼いて昨夜残った味噌汁を善そってちゃぶ台に並べる
メインのおかずは見当たらないが食材は残す所夕食分くらいしか無いので許してほしい
「いただきます」
「い、いただきます……」
彼は今までどんなにひもじい食卓にも文句ひとつ溢した事は無い
セレブなのに寛容で有難い
今回も変わらず箸を進める彼の様子を伺いつつも私は昨夜の泥酔状態について聞き込みをする事にした
これ迄も幾度と無く彼に泥酔状態を披露してきた私だがやはり毎回その時の状況が気になるのは変わり無い
生唾を飲み込み控え目な笑顔を作って彼を見詰める
「あの………すみません………昨日………記憶無くて……」
「だろうね」
此方に視線を送る事無く単調に答えた彼だが不思議と冷たい印象を受けないのはきっと彼が怒っていないと判断が付く様になったからだろう
「あの……ほんまにすみません!!!私何かしましたか……ご迷惑おかけしましたか……!!!いや……おかけしてますよね?!すみません!!!」
「別に」
「…………私何しました……?」
「面白かったよ。………それより前々から思ってたんだけど、何故それがそんなに気になるの?」
まさか曖昧な回答の後に質問が返ってくるとは思いもしなかった
何故気になるのか?そんの決まっている
「だって、記憶無いんですよ……失礼な事言ったりウザい絡みしたり……奇行に走ったりしてへんか……そりゃ気になるでしょ……」
「じゃあ聞くけど……まず失礼な事って何」
「え、……えーっと」
漠然とし過ぎていやしないだろうか………失礼とは一体何なのか……?
私は考えた