第85章 夏の終わりの彼と私
実の所昨夜の記憶は薄ぼんやりしてしまっている……
記憶を辿ると甦るのは夕飯時大好きな芸人のDVDを鑑賞している内に楽しくなり大量のアルコールを摂取したのだが就寝した記憶が微塵も無く更に言えばDVDを最後迄見た記憶すら無い………
其れが証拠に最近アルコールを飲んでいなかったのでスッキリしていたキッチンのゴミ箱前に山積みにされた缶の残骸が何故かピラミッドの様に積み上げられていた
…………非常にまずい………
あんな不思議な物を造り上げたのは彼で無い事は明白で
きっと私の奇行が成せる業だ
そこから導き出される確固たる自信…………
(………絶対イルミさんに迷惑かけた…………!!!うあああああああああああああああっ!!!)
未だ布団に座り込んでいた私は抱き締めていた掛け布団に項垂れる
暫くそうしていたが惰眠を貪り昼前迄眠っていた手前自棄になって二度寝何て事は出来ない……
それ以前に…………
酔って彼に迷惑を掛けた事は明白なのだが
あの出来事は………あの感覚は………夢だったのか………
見た目にはしなやかな彼の指は触れればしっかりとした骨格が在り男性を感じさせる事を幾度と手を繋いだ事で知っていた
昨夜その感覚を下衣越しに感じてしっかりと胸を包み込まれた挙げ句形を確かめる様に動いた指先
以前の様に私の欲望からの夢か……とも思ったのだが
夢にしては鮮明に伝わって来た彼の体温や息遣いがやけにリアルで戸惑ってしまう
しかし今まで生活を共にしていて危うかった事等京都での一時しか無くあれは非現実的な空間故の気の迷い………だと思っている
特段変わった様子も無く佇む彼を見て彼が何か間違いを起こすとはどうしても思えなかった
私は知らず知らずの内に妄想力が逞しくなっているのか………?
再び顔を上げて彼を盗み見る
だらだらと布団から出ない私に呆れた様な表情を浮かべる彼と目が合いドキリと跳ねた心音
(………夢にしたってあれはリアル過ぎる………でも!イルミさんが!あのイルミ様がそんな飢えた様な事…………)
思考も相まって徐々に上がる熱
「お腹すいた」
視線を反らして呟きを落とした彼とは裏腹に私の脳内は混乱していた