第84章 熱い身体とかき氷
一口分掬って口に運んだ後に彼の瞳は輝いた
「どうですか……?」
「うん。シャリシャリしない。口に入れたら溶けちゃった」
「………美味しい?」
「美味しい」
私の反応を伺って此方を見詰める彼に促される様に一口頬張ると
粉雪の様にサラサラのかき氷の上にふんだんにトッピングされたきな粉がミルク氷と絶妙にマッチして甘く溶けた
「ん~!!!美味しい!!」
更に一口、とアーモンドスライスがトッピングされた部分を頬張ると滑らかな食感にアクセントが付き、また違った香ばしさが広がる
添えられた練乳をかけるとまた違った甘味が鼻を抜けて飽きの来ない味わいだ
「ほんまにふわふわですね!美味しいっ!!!」
「うん」
彼は無口ながらも着々と食べ進めている
私は私で夢中になって食べていると
「はい」
突然スプーンを突き出されて、それが彼からのお裾分けだと解った
所謂あーん、というやつだ
彼が先程迄口を付けていたスプーンに乗ったかき氷
(か、…………間接キッス…………キターーーー!!!!!!!!)
頬杖を付きながら私を見遣る彼の瞳は私を急かしている
私は意を決して戸惑いながらも口に含んだ
私の頼んだかき氷とは違いエスプレッソのほろ苦い味わいの奥から追って来るようにミルクの甘味が広がりグラノーラの食感が良いアクセントになっていた
暑くなった頬とは裏腹に冷たく溶けたかき氷
「どう?」
「美味しいですね!」
きなこ雪とは違い甘いながらも大人の味わいでコーヒーと甘味が好きな彼好みなかき氷では無いだろうか
私も一口掬って彼に差し出す
「イルミさんもどうぞ!」