第83章 溺れる心
私と同じ様な気持ちを彼も抱いている確信は強く持てないが
間違い無く言える事は彼は自分のテリトリー内に侵入される事を嫌い、テリトリー内のモノに強く固執する
ヒソカさんやあの男に彼が向けた感情は酷く強い独占欲と嫉妬心なのでは無いだろうか………
ヒソカさんの場合は彼と付き合いが長くそういう感情を出し易いのかと思っていたが
あの男の場合私達は初対面であり、殺意を敢えて出したと言うよりも溢れ出た様に思う
思い返せば藤木から電話が来た際も彼は不機嫌になっていた
その頃とは比べ物に成らない彼の固執
私はどうやら以前よりも確実に彼のテリトリーの深くに位置付けされている様だ
其れとは相反して私には危害を加えないと発言し、本当に今まで命の危機を感じた事も無い
親愛にせよ友愛にせよ……彼は何かしらの愛情を持った相手には見せない猟奇性を持ち
愛する者には歪で独占的な愛を注ぐ
もしもテリトリー内の者が自身を裏切ったと感じたなら容赦無く猟奇的な愛を向ける
そのやり方が独断的で一方通行に成ってしまっても彼は一途にそうし続けるのだろう
彼はどうやら私に曲がりながらも愛や情を感じているらしい………
その事に、その感情に………彼は気付いているのだろうか………
「……沙夜子……?」
思考が巡り俯いていた私の耳に酷く優しい彼の声が響いた
「いえ、もう大丈夫ですよ!!それより、かき氷楽しみですね!」
普段通り笑顔を向けた私に彼は表情を僅かに緩めた
「そうだね」
再び歩き出す
触れ合った腕は暖かく彼の温もりを感じる
優しく答えた彼の声を心地好く聞きながら
心に広がる彼の存在は大きくて決して抜け出せ無い………
彼は甘い猛毒だ
なんてぼんやり思った