第83章 溺れる心
「行こうか」
未だ懸命に彼の腕に抱き付いていた私に向かい事も無さげに言った彼は普段通りで
「そのままで居なよ。次は殺しちゃいそうだし」
私が震えているのに気付いているのか腕を組み易いようにジーンズのポケットに手を入れてさらりと恐ろしい事を言って歩き出した
集っていた野次馬を抜けても落ち着かない鼓動に彼を見上げれば彼も此方に横目を向けていた
途端に溜息を付き瞼を閉じる彼
「?」
私はまた彼のスイッチを押す様な事をしただろうか……
彼の表情からは伺えずおずおずと言葉を紡ぐ
「あの……私……」
「沙夜子、そんなに怯え無くても俺は沙夜子に危害を加えたりしないよ。」
………違う………そうじゃない………私は…………私自身は殺されたりしないだろうとただ漠然とした確信があった
以前ヒソカさんが私に触れようとした時彼はヒソカさんの指を折ってしまった
先程にしても彼は運悪く私に声を掛けた男を捻り上げた
…………………独占的だ。