第83章 溺れる心
8月のある日
私達は人でいっぱいの御堂筋線に揺られて難波迄やって来ていた
何気に彼とこんな繁華街に出向くのは初めてかもしれない
以前新世界へは動物園の帰りに立ち寄ったが其所とは雰囲気が全く違う
正直彼と繁華街に出向くのはかなり抵抗があった
人が多ければ多い程に彼の見目麗しさが目立つのだ
加えて某有名少年誌に休載と連載を繰り返す事で有名な先生が現在も執筆中の人気作品内の登場人物でもあるので熱視線から好奇の眼差し迄男女問わず視線が刺さる
勿論誰も彼がイルミさん本人だとは思わないだろうが張本人なのでキャラクターに似ている所の騒ぎでは無いのだ
私が彼と知り合っておらず街中で見掛けたなら間違い無く熱視線を送る一人に成っていたので責める事は決して出来ないが彼のついでとばかりに私に刺さる視線はどうも居心地が悪い
しかし何故そのリスクを犯してまでやって来たかというと
以前彼が興味を示した"ふわふわかき氷"を食べにやって来たのだ
長い地下を歩き地上へ出ると蒸し暑い空気が嫌に絡む
高島屋前の通りは様々な駅を目指す人なんかでごった返しすれ違い様に肩と肩がぶつかりよろけてしまった
そんな私を然り気無く支えてくれた彼にドキドキしながらも人波に乗って歩き出す