第82章 天袋から広がる話
まだまだ頭の中はお花畑だが彼の方を見遣ると彼は胡座をかいて私の幼少期の頃のアルバムを捲っていた
「………あ、はい」
また勝手に紙袋を開いたのだという事を直ぐに理解した私は彼の隣に並んでアルバムを覗き見る
………天袋にあったか………アルバム
引っ越しの際に紛失したとばかり思っていた代物が出て来て内心嬉しく思う
アルバム一杯に貼られた写真は全てが大切な思い出で
懐かしさに次々捲られるページを指差しながらその時の出来事を彼に話した
彼はしっかりと相槌を打ちながら付き合ってくれて穏やかな時間が過ぎる
全部で六冊在るアルバムを見終わった頃には随分時間が経っており、更に興奮から上半身を乗り出して夢中で話していた私は思いの外彼に接近している事に気が付いた
「すみません………」
おずおずと座り直す私に彼は事も無さ気に
「別に」
と呟いた後に小首を傾げて続けた
「で、これがプレゼント?」
彼の思考回路は何処かおかしい。
思い出のアルバム六冊………此れをプレゼントするトリッキーな奴が世界中探して何人いるだろうか………
私がプレゼントされる立場だとしたらドン引きを通り越して恐れおののくだろう
「いえ……違います……」
「そう」
納得した様に立ち上がった彼は再び天袋を探る
年季の入った紙袋にアルバムを仕舞い彼の様子を眺めていると
彼が引っ張り出して持ち上げた紙袋の底が破れて分厚い本が彼の頭部目掛けて落下した
恐れを知らない図鑑達は最後の一冊迄全てが彼の頭を攻撃して床への着地を決める
図鑑で無ければ殺されているぞ!等と内心思いつつも彼は大丈夫だろうか………と心配になる
分厚い図鑑が何冊も頭に直撃したのだ
私だったら卒倒しているかもしれない
彼の事だから平気だろうと頭で理解していても心配なものは心配で