第81章 サスペンスは突然に
(…………えっ…………何故……!?!?)
「………そうだったの……?」
彼の低い声に見上げれば彼は普段とはかけ離れた悲痛な表情を浮かべていて一瞬目を奪われていた私だったが、抱き締められている逞しい腕にぎゅっと力を込められて肺から酸素が抜ける
「………違っ……!!……ぐるじい"………」
息も出来ないとは正にこの事だ。別にドキドキし過ぎてとかでは無く物理的に息が出来ない。
愛しの彼に抱き締められるなんてドキドキしか無い筈の展開なのだが……今私は骨が折れやしないだろうかと僅かに動く手で必死に彼の胸板を叩いていた
すると突然オジサンは語りだした
彼氏に先立たれた私は彼氏と訪れた思い出の東尋坊で彼の面影を探し、彼の元へ逝く事を決意している……………と
(いやいやいやいやッ!!!私の元彼健在やし、今フリーですからッ!!!!!!身なんか投げるか!てか、その私、私違うッ!!!赤の他人のストーリー!!!原作者オジサン!!!)
私は千切れる程に首を振りまくり必死に弁明を求めたが一向に解放されず視界が霞む
酸欠だろうか……焦りも相まって上手く呼吸が出来ず頭がクラクラする
ポツリと空が溢した滴が頬に落ちて見上げた先で動揺した様に揺れる真っ黒な瞳を見た
(違う………私はイルミさんを探して…………)
薄れ行く意識はそこでプツリと途絶えた
_____________"
賑やかな声に目覚めるとお土産屋さんの一角にある魚介類を食べられるスペースにて彼に抱かれていた