第81章 サスペンスは突然に
ゆっくりとした足取りで彼を探しつつ着実に東尋坊に歩みを進めていると
「お嬢ちゃん!ひとり?」
「?」
お土産屋さんのオジサンに話し掛けられてしまった
手招きをするオジサンの表情は険しく威圧的な印象を受ける
普段の私なら軽い気持ちで近寄っていたのだが今あの強面のオジサンからお土産の品々のセールスを受けている暇は無い
(……オジサン怖そうやし断るんも大変そう…………)
私は愛想笑いを浮かべてその場を後にしようとしたのだが
「お嬢ちゃんひとりで来たのか!」
何故か私を追って来る勢いで店から半身を乗り出したオジサンに驚いてしまう
「あ、えっと……彼氏と来ました!でも居らんなってしまったから……えっと、私行きますんで!」
軽く会釈してその場を足早に立ち去る
全く強引な客引きがあったものだ……なんて考えていると
背後が何やら騒がしい
振り返る人々の例に漏れず振り返ったのはイルミさんかもしれない、と淡い期待を抱いていたのだ
しかし、視界に飛び込んできたのは先程の強面オジサンだった
距離にして15m程だろうか……しっかりとした声で「お嬢ちゃん」と聞こえた
「?」
じっとオジサンを見遣るとはっきりと私を指差し駆け出すオジサン
「!?」
(何!?!?めっちゃ怖いッ!!!)
人の習性だろうか、追い掛けられると本能的に逃げてしまうらしく私は咄嗟に走り出した