第80章 吹く風は夏の色
「トウジンボー………」
彼はポツリと呟いた後に
「沙夜子が行きたいなら其所に行こう」
と提案に乗ってくれた
再び車に乗り込むと慣れた手つきでスマホを操り地図をじっと見詰める彼を私は見詰める
私の24時間タイムスケジュールをグラフにしたならば"イルミさん観賞"の項目に随分時間を割いているのでは無いだろうか……なんてどうでも良い事を考えていると
スマホを仕舞った彼はゆっくりと車を発進させた
「ナビ……打ち込まんで大丈夫ですか……?」
「暗記したから平気。」
「……そう……ですか……」
前々から頭が良いとは思っていたが彼の頭の作りは私とは全く別物な様で本当に記憶力に長けているのだと感心してしまう
(……屈強………プラス頭良いって………落ちひん女子存在するん……)
言葉には出さずに一人頷く
「ねぇ、トウジンボーって検索で見た感じ只の崖みたいだったけど……何かあるの?」
彼は今から向かう目的地に然程興味が無い様で偉く単調な声色で問う