第80章 吹く風は夏の色
8月16日
「あの…………何処に行くんですか………?」
「秘密」
溶ける様な日射しの中高速を走る車に揺られて私は助手席に座っていた
今朝5時頃突然私を揺り起こした彼は「外出しよう」と淡々と言葉を発すると
「さぁ、早く着替えて」
と、急かす様に両手を叩いた
(…………何事……………。)
正直な話、寝起きに突然理由も告げられぬまま急かされても覚醒し切らない頭ではただぼーっと彼を仰ぎ見るばかりで
そんな私を彼は無表情に眺めていた
よく見れば彼はしっかりと身支度を整えて準備万端の様で後は私の支度待ちと言う訳なのだが………
「………何処に行くんでしょう?」
「良いから早く」
至極真っ当な疑問の様に思えた私の質問は彼の無感情な声によりはっきりしないままに
のそのそと身支度を済ませたのだった
____________"
彼の突発的な行動に特段驚きもしない私は随分彼に振り回され慣れてしまったらしく
俯瞰で見れば従順な様にも感じる自身の行動を少し可愛いらしいのでは無いかと思った
しかし彼に話すと「は?」と言われるのがオチなので脳内イルミさんに誉めてもらうという不気味な方法で気分を上げつつハンドルを握る彼を盗み見る