第79章 鳥が一羽
「あはは………やっぱりバレてましたか!」
「まぁね」
彼は勝手知ったる様子でキッチンに立ちコーヒーを沸かしていて
ココア入れる?と首を傾げてくれたが不意に首を横にふった
彼は何時もの事ながら通常運転で何を考えているのか表情から読み取る事は難しい
先程の行為に何の意味があったのか解らないが語る様子も無い彼に私はおずおずと口を開く
「……あの、さっきの……」
「なに?」
「………首……何かついてました…?」
大きな瞳に真っ直ぐ捉えられて生唾を飲み込む
彼は瞬きもせずに
「何も。俺が沙夜子に触れるには何か理由が必要?」
「………理由……」
……彼が私に触れる理由とは何だろうと考える
そもそも人に触れる理由として異性同性問わずなにかしらの好意が根元にあるのでは無いかと考えてしまうのは私だけだろうか……
だけど理由が必要なのかと聞かれると困惑してしまう
そもそも私の考えるなにかしらの好意を彼が抱いてくれているのならそれだけで充分な筈だ
………明確に触れた訳を話されると私達のバランスは簡単に崩れてしまう様な危うさを感じた
「いえ………特に要りませんね!」
ヘラりと笑って見せたのはズキリと痛む胸を無かった事にしたかったからで
「……理由なんてあって無い様なものだよ」
ポツリと呟いた彼の声を私は聞いていないふりをした
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だらだらテレビを見ている内に15時を過ぎてしまった
休日はあっという間に過ぎて行く