第8章 お坊ちゃんの一般家庭訪問
リビングに戻ると弟である翔太があろう事かイルミさん
に絡んでいた
「沙夜子は五年くらい付き合ってた人おったんやけど、そいつと別れたっきり誰とも付き合いたくないって言うてたんですよ」
「へぇ、そうだったんだ」
(おいおいおいおい……ほんまは恋人でも無いねんから言う必要無いのに……何か嫌……)
「昔の沙夜子の写メ見ます?」
「うん。見たい」
(おい!別に見せんでも良いっ!!)
「翔太!見せんでも良いから!」
「えー、イルさん見たいですよね」
(何ニヤニヤしてんねん!イルミさんバシッと断って!)
「見たい」
「……っ!」
(まさかの…見たいんかい………)
「……びっくりしないでくださいね」
「?」
私の念押しにイルミさんは不思議そうにしているが変に緊張する
遺伝子は争えない……じゃーん!何て言いながら携帯画面を見せる弟
私も気になり画面を覗けば、そこには腰まで伸ばした金に近い茶髪に元々の二重瞼よりも広い幅で作った二重、上下に付け睫を付けてカラコンを入れた、ギャルの王道だった17,8歳辺りの私の姿だった
その証拠にめちゃくちゃミニスカートの制服を着ている
何を隠そう……(別に隠す事じゃないけど)
今はナチュラルに近いメイクに髪色も黒に近い落ち着いた色味で髪も肩より少し長いくらいまでに切っている
付け睫は生えてるんやけど?取るとかありえへんやん~?カラコンはマストやろ
………と思っていた昔…………恥ずかしい
今も気合いを入れる時に部分付け睫とカラコンは入れるが重くて仕方ないと感じる
辛うじてギャルだった面影があるのは右耳に三ヶ所左耳に二ヶ所空いたピアスくらいだ
恐る恐るイルミさんを見ると
「全然違うね」
と此方をじっと見ていた
「……ですよね」
私はこれまで隠れオタクできたのだギャップでイルミさんが風邪を引いてしまわないか心配だ
「今の方が可愛いよ」
「!!」
目線を逸らさずに放たれた言葉は私の心臓を止める勢いがあった
キャーキャーと騒ぎ立てる母の声が聞こえる
(お母さん……私の方が射止められそう……)