第8章 お坊ちゃんの一般家庭訪問
その後お喋りな我が家族は交互にイルミさんと話し
御節料理の意味を説明し、嬉々としてお雑煮とお汁粉を振る舞い
第2ラウンド、カニに突入していた
網に次々とカニの足を乗せて焼いて行く
何とも言えない食欲をそそる香りが立ち込めて自然と箸を進める
食べ方を説明し、順調に味わう中
母は不意にイルミさんを連れてキッチンへ消えた
それから5分……不安である
(何…… 唯一ほんまの事知ってるはずのお母さんが何してるん……)
心配しているとイルミさんが席に着くのと交代にキッチンに呼ばれた
「何?!」
小声である
「イルミ!本物やな!」
「え!?」
「ちゃうねん、針で変身してもらってん!!本物やな!」
「……… うん」
きっと疑心暗鬼になっていた母も真実を確信したかったのだろう
イルミさんに針での変装を頼んで納得した様だ
「……… 沙夜子あんた、玉の輿狙えるな!」
「は?」
独りうんうんと頷く母は中々の妄想族だ…住む世界が違う住民だと言う事が頭から抜けているのだろう
「しっかりがっちり掴んどくんやで!あの子孤独な感じやん?グイグイ行って射止め!」
「………………」
かなりハイテンションな母に背中をバシバシと叩かれた