第78章 家族と私と彼
動物好きな祖母の為に必ず訪れようと二年程前から家族で話していたが、其所にまさかイルミさんも参加する事に成っていようとは夢にも思っていなかった
寧ろ二年前の私が彼も参加する!と騒いでいたら危ない奴だ……
チラリと隣を見遣ると彼は腕組みをして瞼を閉じており少なからず無防備に見える
やはり良く眠れなかったらしい
本当に眠っているのかは解らないが心の中でおやすみなさい、と言っておいた
車は山道に入りガタガタ揺れるが彼は一度も瞳を開く事は無かった
暫くして到着した山の中に有るローカル感溢れたゲートは小ぢんまりと佇み連休とはいえ満員御礼という訳でも無く丁度良い隠れ家的スポットにワクワクと胸が弾む
彼の腕に触れてそっと揺するとゆっくりと開いた瞳は半分程しか開いておらず気だるげな視線と目が合い、肩から垂れた長髪をかき上げた彼は声に出さず「おはよう」と唇を動かした
ただそれだけの出来事なのだが妙に妖艶に感じてドキドキしてしまう
家族もいる車内で私だけが知る彼の姿に跳ねる胸をどうか許して欲しい
車を降りる際も最後迄私を待って振り返る彼にキュンとしてしまい思わず駆け寄った
入園を済ませる前から沢山のワンちゃんが出迎えてくれて撫でまくる
園内に入ると更に沢山の動物が出迎えてくれたブタやヤギは勿論だがタヌキやアライグマ、ミーアキャット等柵無く身近に眺める事が出来て彼はお正月に行った動物園のイメージがあったからか繁々とその様子を眺めていた