第78章 家族と私と彼
あの後私達は星を眺めたりして楽しく話した
その間繋がれた手が離れる事は無かった
部屋に戻ってもドキドキと高鳴る鼓動は全身に血液を送り続け
はっきりと思い出される大きな掌の余韻に浸りながら私は眠りに付いた
(………イルミさん……もう寝たかな………)
____________"
けたたましく鳴り響く目覚ましの音と共に起床して身支度を整える
男性陣の宿泊する部屋へ向かうと一番に彼に声を掛けられた
「おはよう」
そう言った彼に今にも卒倒しそうになる私は最早只のイルミさんファンと化す
大きめのグレーのTシャツにジーンズと至ってシンプルな出で立ちなのだが何気無く組まれた脚は誰が見ても一目瞭然ですらりと長くジーンズが似合う事この上無い
更に良く眠れなかったのか緩く閉じた瞼を擦る仕草は普段のクールビューティーからのギャップで可愛さが際立っている
(ぬあーッ!!!!!!可愛い!!!よっHUNTER×HUNTER界一のジーニスト!!!沙夜子ベストジーニスト賞受賞です!!!おめでとう!!!)
実際そんな物は存在しないが心の中は拍手喝采である
「にやけてないで行くよ」
そんな事を考えているなんて微塵も顔に出していないつもりだった私だが随分ぼーっとしていた様で彼に促されて漸く皆の背中を追った
…………どれだけニヤけていたのだろう………考えるだけで恐ろしい………
朝食のラウンジは片面が全て窓ガラスになっており晴れ渡る空から注ぐ日射しが海面に反射して輝いていた。本日も快晴だ。
ビュッフェ形式に並べられた様々なパンやハム等の他スープ類も多分に揃えられ、白米にお味噌汁なんていう和朝食も楽しめる豊富なラインナップに嬉々として皿を手に取るが彼の姿が見え無い
前方を確認する様に列を覗き込むが見知った背中は無く
彼に限ってはぐれるなんて事があるだろうか………暫くキョロキョロしていると
"神崎様"とネームプレートが立てられた窓辺の大きなテーブル席にきちんと座り此方を不思議そうに見詰めている彼と目が合った
「……ブッ!!!」
込み上げる笑いに思わず吹き出してしまう