第77章 海の色
外に出ると街灯も無くただ暗闇が広がっていた
躊躇無く先を歩く彼の背中が普段より大きく感じて安堵を求める様に小走りで隣へ並ぶ
彼は昼間なら海を見渡せるベンチに腰掛け私も引かれるがままに腰掛ける
この道中沈黙に包まれていた二人
暗闇ではっきりと見えない彼が口を開いた
「海が好きになったんだ」
「………はい」
「海は何度も見たことがあったけど、突然こんなにも綺麗だったんだと思ったんだ」
「……はい」
「俺の好きな物……また見付けたね」
「そうですね!」
彼の声色はただ静かで繋がれた手から自分のものではない落ち着いた鼓動を感じて顔を上げる
目の前に広がる海は果てしなく黒く何も見えない暗闇の中ただ彼の温もりを感じていた