第77章 海の色
夕飯は豪華で品数も多く大満足の内に終了し部屋でワイワイと飲み直した後に女性陣は部屋へ戻る事になった
部屋を後にする直前に彼をチラリと見遣ると此方に視線を向けた彼と目が合い徐に歩み寄った彼に手首を掴まれる
「?!」
扉が閉じる寸前に捉えられ驚きを隠せない
しかし他の視線に気付き冷や汗をかいた
隣の客室へ目線を向けるとニヤリと笑う母と目が合い
「二人でちょっと喋ってきたら?」
と言われてしまった
妙に照れてしまい顔が熱くなり引き吊った笑みを浮かべる
手首は其のままに後ろ手で扉を閉めた彼との間には沈黙が流れ何の感情も読み取れ無い真っ黒な瞳を見詰める
「………?」
「……海」
「……海?」
「海が見たい」
「……見ましょうか……?」
予想外の展開にドキドキと跳ねる胸、彼の手は離れてしまったが肌をなぞる様に指先が触れていてどうすれば良いのか解らず俯く
歩き出そうにも触れられた指先の感覚に一歩踏み出す事もままならずただ地面を見詰めていると流れる様に手を取られて長い指に絡め取られる様に手を繋がれてしまった
「っ………!」
言葉は出ずされるがままに彼に引かれて歩く
彼の突然の行動に戸惑いながらも絡められた手にぎゅっと力を込めると緩く握られていた手はしっかりとした力で握り返された
引かれる様に歩く中で彼の背中を盗み見る
サラサラと流れる黒髪は艶っぽく光る
逞しく長い腕に引かれる今の状況が信じられ無くて繋いだ手から早い鼓動は届いてしまっているのでは無いだろうか………