第8章 お坊ちゃんの一般家庭訪問
緊張の面持ちでチャイムを鳴らす
(何で実家に入るのに緊張しなあかんねやろ………)
実家に来る道すがら何も知らない弟と父を驚かさない為に
色々と打ち合わせをした
・名前はイルさん。アニメオタク一家だからそのままだとあまりにも……なので
・職業は電子機器に無知な我が家が突っ込んで聞けない様にプログラマーにしておいた
・あとはとにかく初々しい恋人らしく
・トルコ在住日本人だったから日本文化をあまり知らない
という設定を設けた
(イルミさん大丈夫かなぁ……私がちゃんとフォローせな……)
チャイムが鳴って秒で母が出迎えてくれた
「ただいまぁ~…」
「お帰りなさい、……彼氏もいらっしゃい」
「や、こんにちは」
(母よそのニヤニヤは辞めてくれ……イルミさんもめっちゃフランク……)
無表情なイルミさんと異なり不安から変に笑顔を張り付けたままリビングへ歩を進めた
そして炬燵で御節を囲み一家団欒である
「こんにちは!初めまして」
イルミさんをガン見しつつ挨拶する弟
「おう、座れや」
既にお酒を空けて何処かよそよそしい父
「どうも」
と言って炬燵を眺めて棒立ちのイルミさん
「イルさん!これ炬燵って言うて暖かい…… ねんで、座って!」
「ふーん」
「あ、お父さん、イルさんはずっとトルコに住んでたから日本の文化があんまりわからんねん」
「おう……まぁ飲めや」
「ありがとう、いただきます」
父がお酒を進めた時点で少しホッとする
父は無口な方だが決して怖い人ではない。
イルミさんは心無しかいつもより礼儀正しく一家と乾杯をする
「あれやな!ほんまにイルミそっくりなんですね!」
弟は少し興奮しながらイルミさんに話し掛けた
「うん。良く言われるけどそんなに似てる?」
くりっと首を傾げる仕草に弟は
「ほんまに似てますよ!」
と興奮気味に答えた
父もその言葉に
「あれか、キルアのお兄ちゃんか
」
と、まじまじと彼を見るので緊張してしまったがイルミさんは
「あまり詳しく無いんですけどね」
と微笑んだ。
(なっ………!!イルミさん凄い……敬語までマスターして愛想笑いまで修得っ!!)
和気あいあいとした雰囲気にいつの間にか緊張は和らいでいた