第77章 海の色
墓を清掃した際に多少なりとも汗をかいた
それは自身だけでは無いにせよ………汗拭きシートの購入を固く決意した
暫く歩いてホテルから出ると芝の広場に出た
まだまだ日の高い16時
何処までも続く水平線は遮られる事無く綺麗に輝く
「綺麗ですねー!」
「うん」
本当に思っているのかいないのか
高台な為に吹き上げる風に長い黒髪が舞う
彼は其れを軽く抑えながら眩しさに瞳を細めた
私は柵に引っ付いて海を覗き込む
水深が浅い様には見えないが透き通る青はとても綺麗で岩に打ち付けられる水飛沫が白く跳ねる
「ここ何海でしょうか……」
恥ずかしながら答えも解らない小さな呟きだった
「瀬戸内海」
彼は隣に並んで柵に両手を付くと静かに教えてくれた
「瀬戸内海でしたかぁ………」
「沙夜子が解らなくてどうするの。」
ごもっともな言葉に苦笑いを浮かべる私の頬を潮風が撫でた
此方に来た頃より彼は確実に沢山の知識を得ているという事実に彼と出会ってから半年以上の時間の経過を実感してしまう
切なく脈打つ胸にじわりと青い色が広がった
「イルミさん」
「何?」
私の声に反応が返ってくる
「なんでもないです」
「……そう」
それだけの些細な事にどうしようもない幸せを感じた
______________"
暫く海を見ていた私達だったがどちらとも無く部屋へ戻った
「明るい内にお風呂入ろうね!」
と嬉々として発言した祖母の言葉に其々男女に別れて大浴場に向かう
海を望む露天風呂が目玉だが大浴場が苦手だと言った彼は大丈夫だろうか………