第77章 海の色
香川県のホテル、ベッセ○おおちの湯に到着して早目にチェックインを済ませる
今回で訪れるのは三度目となり勝手知ったるホテルは海を望む高台に建っていて他には何も無い
一応男女に別れる為に二部屋予約してあるが一部屋に皆集合して各々寛いでいる
しかし彼だけは落ち着かない様子で窓から外を眺めたり室内をウロウロしているので少し海を眺めて来ると母に声を掛けて客室から連れ出した
廊下を歩きながら視線を向けると彼も此方を見下ろしていて視線が交わった
「気疲れしました……?」
「別に」
「ほんまですか?私やったらぐったりですけど……」
「本当に平気。潜入する依頼なんてしょっちゅうだしその時は変装迄しなくちゃならないからそんなのに比べると気疲れなんて微塵も感じてないよ」
「……良かった。でも無理はせんといてくださいね?」
「うん」
てっきり集団行動にストレスを感じて落ち着きを失ったのだと高を括っていた私の予想は空振りだった
興味が有ればキョロキョロと辺りを見渡す事はあっても普段何処へ行っても落ち着き払った様子で静かに佇む彼の姿から先程の行動に違和感を感じる
「部屋何か気になりました?」
「何か臭いが気になってさ」
「臭いですか?何かしましたっけ……?」
「カビっぽい」
「まぁ、宿泊施設は仕方ないですね……私には全く解りませんでした……イルミさんは鼻が良いんですね!」
「沙夜子より嗅覚は良いかな」
以前から思っていたが、彼は何かしらの香りに敏感に反応を示す
もしかしたなら元の世界では致命傷に成る様な毒物なんかを匂いで嗅ぎ分けていたのかもしれない……
毒物の訓練もしていたと話していた彼だったが摂取しても平気な容量は存在した筈だ。
常に危険と隣合わせの職業故に反応してしまうのも仕方がないかもしれない………
なんて小難しい事を考えていたのだがはたと焦り始める
(………………絶対汗臭いとか思われてるやん……………!)