第69章 夏祭り
「美味しい」
と呟く彼の声をぼんやり聞きながら私は懸命にイカ焼きを平らげた
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私達は境内も回り屋台を全て見て回った
そこで私は立ち止まる
「?」
私につられて立ち止まった彼を見上げる
「私がしたい事ばっかりでイルミさんしたい事してないです……」
彼はゆるゆると頭をかいた後に私を引いて再び屋台に向かって歩き出した
私も黙って着いて行くと到着したのは牛串の屋台だった
彼は淡々と注文しているが5種類ある串を全て2本ずつと少し量が多い様に思うがパックを受け取ると
再び私を引っ張り歩き出し次いで到着したのはアルコール類を売っている屋台だった
彼はハイボールとビールを購入するとハイボールを私へ手渡し祭り通りから程近い公園のベンチに腰掛けた
私も少し間をあけて座る
牛串が全て2本ずつだった事、お酒を私に手渡した事で少し飲もうという事なのだろうと解釈する
「乾杯です」
「ん、」
カコンと鈍い音を立ててぶつけた缶を傾ければ熱い身体に冷えたアルコールが染み渡る
モグモグと串を頬張る彼
「……疲れましたか?」
「人混みがね」
「ですね。私もちょっと疲れました」
私達と同じ様に考える人は沢山いるようで公園内にも人の気配を感じるがお祭り会場よりは随分と静かで見える範囲に人は居らず
先程迄の賑わいは何処か遠くに感じる
「沙夜子も食べて」
「ありがとうございます。いただきます」
パックに入った串を一本取り食べるとジューシーな肉汁にアルコールが進んだ
お互い無言のまま半分程酒が減った頃口を開いたのは彼だった
「時々不思議に思う事があるんだ」