第1章 未知との遭遇
「あの…本名をお伺いしても良いですか?…なりきってらっしゃるのはわかるんですけど」
「本名だけど。」
(あいたたた……。この人ヤバい人や。)
「いや、コスプレですよね。HUNTER×HUNTERのイルミですよね。そんなん見たらわかるんですよ…私もアニメ好きなんで。…そうじゃなくて、貴方が誰なんか聞いてるんですよ…。」
「そこまでわかってるなら話は早いんだけど、俺がイルミ=ゾルディック本人なんだよ。」
話が通じない事に戦慄した。
「…もう嫌!怖い怖い怖い怖い!!!!」
取り乱す私を他所にコスプレイヤーは淡々と語り始めた
要約するとこうである。
・自分は異世界から来た
・仕事をしくじって暫く身を隠したい
・知り合いに頼んで特殊な念能力者の力で安全な異世界へ来た
・より目立た無い為にこのボロ家を選んだ
・話しが早く進む様に自分を知っている人間が多く住むこの異世界を選んだ
一頻り説明を終えたコスプレイヤー…もといイルミさんは
頭真っ白な私に続けて
「喉乾いたんだけど」と言った
「はい!只今!」
突然の出来事に困惑しつつも素早く反応を示した私が布団を飛び出して目にしたのは
ドアノブが破壊されて開け放たれた玄関扉だった
「あの…えっと…玄関」
「あー。中に入るには仕方ないよね」
相も変わらず淡々と言い放つ彼に私は現実逃避からか与えられた情報量のキャパを超えてしまっているのか
何も言えずに麦茶を入れて彼に手渡した
一口喉を潤した彼
僅かに動いた眉から察するに飲み慣れていないのだろう
全てを信じた訳では無いけど目の前に座る彼はアニメから出てきたと言われても違和感の無い美形な訳で…
玄関の破壊の仕方も常人では無い…だけど、確かな証拠が欲しくなった。