第1章 未知との遭遇
部屋の中で大きな物音がした気がした。
しかし、それは些細な出来事だと思わせるくらいに激しい睡魔に襲われて微かに浮上した意識がまた深く沈んで行くのを感じた
どれくらいの時間が経ったのか…
年末の休日に惰眠を貪っていた耳に聞き慣れ無い声が響いた。
「もしもーし」
先程迄の睡魔は何処へ消えたのか、覚醒する脳は既に今自分が置かれている事態の把握を急いていた
(……えっ…テレビ付けたまま寝て無いし…確実に自分の部屋の中で声する…え?泥棒…?!)
お世辞にも広いとは言えない1フロアの部屋の中に自分以外の人の気配を感じて背中に嫌な汗が流れた
「ねぇ、まだ起きないの?」
(っ…!!!)
明らかに自分に投げ掛けられた声に飛び上がら無かった自分を誉めて貰いたい気分だ
(…しかも男…!?)
直ぐ背後から聞こえる声色から異性である事が解った。
「困ったなー」
言葉とは裏腹に抑揚の無い声は困っている様には聞こえない
…泥棒にしたって明らかに一人暮らしの貧乏人が精一杯生活しているのは明らかなこんなアパートを選ぶ筈が…もしかして強姦…?!
特段スタイルが良い訳では無いけど…ヤれれば誰でも良い…なんて事を以前テレビで聞いた様な聞かなかった様な…
「…ねぇ、起きてるの解ってるんだけど」
「……えっ?!!!!」
ガバリと勢い良く上体を起こして振り返れば其処にはえらくハイクオリティーなコスプレイヤーが座っていた
「おはよう」
なんて、至極当然の様に挨拶をする男は私の大好きなアニメ
HUNTER×HUNTERのイルミ=ゾルディックの変なキノコの生えた服装に特徴的なサラサラの黒髪、黒目がちの大きな猫目でゆっくりと瞬きをしながら地べたに座り此方を見据えていた
「……えっと…」
脳内はパニックである。
(何で見ず知らずのコスプレイヤーが居てるん…めっちゃハイクオリティー…)
知り合いや友人を巡らせてみても思い当たる人物が居ない
(そもそも男友達なんか二人くらいしかおらんやん…)
数少ない男友達とは失礼ながら容姿がかけ離れている
沈黙の中ただ見詰め合い、相手は何も語ろうとしない
「…えっと、どちら様ですか…」
寝起きなのも手伝って普段より低い声が出たがコスプレイヤーは気にする様子も無く
「俺、イルミ=ゾルディック。」