第69章 夏祭り
そんな彼と手を触れ合っているという現実すら夢なのでは無いかと思えるほど彼は浮世離れして綺麗だった
「沙夜子?」
「……あ、はい!」
すっかり見惚れてしまい言葉を忘れていた私を不思議に思ったのだろう彼は私をしっかり見据えて首を傾げてしまっている
「えっと………どうされました?」
「…………あぁ、あれはしなくて良いの?」
彼が指差す先にあったのはスーパーボールすくいだった
先程金魚すくいをしたいと訴えた私を気にかけてすくうものなら何でも好きなのではと思っての事だろう
大して好きでは無いが彼が私の事を考えて声かけをしてくれたという出来事が嬉しくて私は張り切って返事をした
屋台に近寄ればカラフルなスーパーボールがそうめん流しの様に回っていて気分が上がる
と、私が流れるボールに見入っている内に彼はさらりと支払いを済ませていて私は慌ててかご巾着からお代を出そうとしていると、要らない。と手を抑えられてしまった
先程の金魚すくいもそうだし彼の身に付けている浴衣も彼の自由に使えるお金から出されていて申し訳ない気がするが彼の表情からこれ以上遠慮するのは逆に失礼かと甘えておいた
スーパーボールすくいもやはり私は得意な様で順調にすくって行く
無機物な分ポイへの負担は少ないかと思われたが金魚より重いボールに耐えられず1つ目の器一杯にした所で綺麗に紙が無くなってしまった