第69章 夏祭り
普段車が走る広い道路もこの日ばかりは通行止めとなり夕陽に照らされた先が見えない程沢山のカラフルな屋台が並ぶ
既にガヤガヤと大勢の人で溢れた其所は高い気温と鉄板の熱、人々の熱気でごった返し
独特の雰囲気を醸し出していた
私は素直な感想を口にする
「思ったより人多いですね……」
「ニュースでは何時もこんなものだよ」
「そうなんですか。………人混み大丈夫ですか……?」
「………………まぁ頑張ろうかな」
「……ありがとう。でも、楽しみましょう!!!」
「うん」
彼は人の多さに眉を潜めたが興味は有る様で屋台をじっと眺めていて非常に可愛い
いざ人波に足を踏み入れようと歩みを進めていると自宅と同じ様に突然手首を掴まれて歩き慣れない格好のせいで転びそうになった
「!?」
「はぐれると面倒だから」
彼に軽々と支えられ
その言葉に納得していると自然と手を握られて照れくさくなり会話を続ける事が出来なかった
人波に乗って私より先を歩く彼の背中を追い掛けつつしっかりと握りしめられた手を見る
恋人繋ぎの様に指を絡められている訳でも無いのに胸に溢れるのはとんでもない幸福感だった
次々に表れる屋台に目を奪われる
そう言えば昔は両横共に屋台が並んでいたのに片側にしか並んでいないのに気が付いて時の流れを感じた
直ぐ側で親に連れられて歩く小さな女の子は浴衣に身を包んで楽しそうにはしゃいでいる
遠い日の記憶
大好きな祖父に連れられて毎年このお祭りにやって来た
普段とは違う浴衣にはしゃぎながら従姉妹や弟と胸を弾ませて「何でも好きなやつあったら言え」と豪快に笑う祖父に頭を撫でられ幼い私は瞳を目一杯細めて笑った